「あなたの人生の物語」テッド・チャン

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

テッド・チャン(ウィキ)

内容(アマゾンより)
地球を訪れたエイリアンとのコンタクトを担当した言語学者ルイーズは、まったく異なる言語を理解するにつれ、驚くべき運命にまきこまれていく……ネビュラ賞を受賞した感動の表題作はじめ、天使の降臨とともにもたらされる災厄と奇跡を描くヒューゴー賞受賞作「地獄とは神の不在なり」、天まで届く塔を建設する驚天動地の物語--ネビュラ賞を受賞したデビュー作「バビロンの塔」ほか、本邦初訳を含む八篇を収録する傑作集。

2003年ローカス賞受賞

バビロンの塔(Tower of Babylon 1990)- 1991年ネビュラ賞受賞
理解 (Understand 1991) - 1992年アシモフ読者賞受賞
ゼロで割る (Division by Zero 1991)
あなたの人生の物語 (Story of Your life 1998) - 1999年シオドア・スタージョン記念賞、2000年ネビュラ賞受賞
七十二文字 (Seventy-Two Letters 2000) - 2001年サイドワイズ賞受賞
人類科学の進化 (The Evolution of Human Science 2000)
地獄とは神の不在なり (Hell is the Absence of God 2001) - 2002年ヒューゴー賞ローカス賞ネビュラ賞受賞
顔の美醜について : ドキュメンタリー (Liking What You See : A Documentary 2002)


ちょいコメ(ネタバレあり)
私にとって難解な物語だったが、やっと読了。コメにかなり悩む。びっくりする話ばかりだったので。。。
まずこの本との出会いだが、人気ある受賞作品だし、表紙絵や題名に目をひかれた。
歴史っぽい(バビロンの塔などの寓話を題材にした)ファンタジーだと思った。が。。
そうでもあるし、違うようでもある。
思うに、あとがきに「作者は宗教的背景を持たずに育ち、宗教には個人的に思うところはない」とある。
なので、普通のSFとして楽しめばよいのだなと思った。
どの物語も印象に残るが、特に印象に残ったのは3作品。

あなたの人生の物語
「あなたのおとうさんがわたしにある質問をしようとしている」という書き出しではじまる。
母親による娘の人生の話、と思いながら読んだが。。ちょっと違う。
まだ娘は生まれてもいないし、そもそもあなたのお父さんとの愛の行為もまだだが、
母親は、未来の思い出を語っているのだ。
なぜそんなことができるのか?
普通の時間感覚は過去→未来じゃないのか。未来の思い出とは・・不思議だ。
 
母親は学者で、仕事でヘプタポッド(エイリアン)と交流する。
そして「未来を思い出すこと」ができるようになる。
フェルマーの原理」「変分原理」とか出てくるが、難解なので、光の所要時間だな位で適当に読み飛ばす。

巻末作品覚え書きに作者が、スティーブン・ホーキングや、他のわたしより若い連中にこう言ってやりたいが印象的。
「しんぼうしていたまえ。諸君の未来は、諸君が何者であろうと、諸君のことをよく知り、
愛してくれる飼い犬のように、諸君のもとにやってきて、足下に寝そべるだろう」
作者の物語の発想にただただ驚嘆した。

「地獄とは神の不在なり 」
ニールがどのようにして神を愛するようになったかを描く物語。
ニールは足が先天的異常に生まれる。愛するセイラと結婚するが、亡くなり天に召される。
その後ニールはつらい生活を送っている。
ニールと体の状況は似ているが、ジャニスは生まれつき足がない。それを天の賜と考え、伝道に生きる。
天子の降臨でジャニスは健康な脚を授かる。が、今までの伝道ができなくなる。
次の天子の降臨を捜し、脚を他の人に与えたいと願う。が、降臨で脚ではなく、目がなくなる。(ゾ〜!)
ニールは車にひかれ地獄に堕とされる。天に召されたセイラとは会えない。が、ニールはわかったのだ。
「生きていく中でのあらゆることが愛であり、苦しみですら、いやむしろ苦しみこそ愛である」
「地獄とは神の不在」なところ。今までは常に神の認識があった。

今まで気づかなかったことを気付かせてくれる物語。
生きていく中でのあらゆることが神の愛なのだなぁ。

「顔の美醜について」
「美醜失認処置」を使ったら・・という話。
この処置をしたら、顔で人を判断しないから、人生は違ったものになるだろうな。
もし私だったら簡単に取り外しができてもしないだろうな。
美しい人や物を見ることは楽しみでもあるから。